CONVERSATION 特別対談

特別対談 命を食べること。 漫画家:森 恒二 猟師:千松信也

京都府京都市。都市部からそれほど離れていないところにも関わらず、山々に囲まれた場所に千松氏の自宅があった。家のすぐ裏には山がある。対談の前に、まずは千松氏にその裏山を案内してもらった。時間にして約30分。ケモノが通る道や痕跡を教えてもらいながらも想像以上に険しい山中に、やや言葉を失う森恒二先生と取材班。汗だくになりながらも、山の凄まじさを痛感したところで、ついに対談が始まった──。

初めての狩り

森 ● 山を案内していただいて、ありがとうございました。思っていた以上に険しくて驚きました。実はジブン(※森先生の一人称)が、千松さんの本『ぼくは猟師になった』を知ったのは、『自殺島』の準備期間中でして。でも最初は読めなかった。

千松● それは読んでしまうと、影響を受けてしまうということですか?

森 ● その通りです。妙にそんな気がしてしまって。それで実際に読んだあと、凄まじい衝撃を受けました。動物を殺して食べるまでのことが完璧に書いてあったから。初めてシカを狩るシーンなんかは、『自殺島』とかなりシンクロしました。シカを初めて殺したとき、どういう気持ちでしたか?

千松● まず、僕がやっているのは『ワナ猟』というもので。鉄砲などは使わず、鋼鉄製のワイヤーで獲物の足をくくり上げる『ククリワナ』を使っているんです。それで山に入って、事前にワナを仕掛けてある場所を毎日見回るんですが、初めてシカがかかっていたわけです。その瞬間は単純にうれしかったですよ。シカは後頭部を棒でどついて、失神させてからナイフでトドメをささないといけないんですが、最初はどうしたらいいのかわからなくて。やり方はワナ猟の師匠から聞いてはいましたが、そんなにデカい動物を実際に殺したことがなかったし、殺すということにすごく逡巡 (しゅんじゅん)してしまいました。